夕食の後、リビングのソファに崩れた家族。ダイニングテーブルにはお皿が残ったまま、子どもはテレビの前。「うちはいつもこんな感じ」と溜息をついてしまう。あるいは、新築の打ち合わせで「LDKは一体型がいい?それとも分けた方がいい?」と妻と話し合い、答えが出ないまま夜が更ける──。
誰でも一度はこんな体験をどこかでされているかもしれません。
その正体は、自分の性格やこどものしつけでなく、また片付けの問題でもなく、ダイニングとリビングという2つの空間の「関係性」にあるかもしれません。実はこの関係性は、距離・視線・切り替えの3つの軸で読み解けます。それを知るだけで、自分の家の「なんとなく」は言葉にできるはずです。
私は住宅設計の経験を経て、現在は作業療法士として活動しています。住まいを「設計する目」と「暮らしを支える目」の両方で見てきました。
この記事では、ダイニングとリビングの役割の違い、関係性を決める3つの軸、そして家族の食事・くつろぎ・集中という3つのモードがどう切り替わるかを解き明かします。読み終えたとき、業界でよく語られる「一体型 vs 分離型」の二項対立を超えた、自分の家族に合う選び方が見えているはずです。正解の間取りはありません。あなたの暮らしに合っているか──それが唯一の問いです。
この記事を読むと得られること
- ダイニングとリビングの「本質的な役割の違い」がわかる
- 2つの空間の関係を決める「3つの軸」(距離・視線・切り替え)がわかる
- 建築×OTの視点から、空間の関係性が家族の食事・くつろぎ・集中に与える影響がわかる
- 「一体型 vs 分離型」の二択を超えた、自分の暮らしに合う関係性の選び方がわかる
- 子どもの成長や家族の変化で、関係性をどう見直すかがわかる
もしかして、こんなことありませんか
ダイニングとリビングの関係の問題は、毎日の暮らしのいろいろな場面に小さな影を落とします。当てはまるものがないか、見てみてください。

食事中、ついテレビに目が行く
家族で食卓を囲んでいるのに、ふと視線がテレビに引かれる。子どもの食べる手が止まり、会話が途切れる。こんなしつけでいいのか?
→ 米国のレビューが繰り返し指摘してきたのは、集まる回数そのものではなく、食卓の雰囲気のほうが子どもの育ちに効く、ということでした(Fiese & Schwartz、2008)。テレビが視界に入り続ける配置は、その雰囲気を静かに左右します。
くつろぎたいのに、視界に乱雑なダイニングが入る
ソファに座ってリラックスしたいのに、ダイニングテーブルの上のお皿や郵便物が目に入って気が休まらない。
→ 目に入る物が多いほど、「ここが自分の家だ」という実感が弱まることが報告されています(Rosterら、2016)。くつろぎの場としてのリビングが、視覚的に機能していない状態です。
子どもがリビングで宿題をしない
ダイニングテーブルでもリビングのローテーブルでも、宿題が始まらない。集中できる場所がない。
→ 小学生を対象にした26の研究をまとめたレビューによると、いちばん邪魔になるのは人の話し声でした。言葉を扱う記憶が、目立って妨げられます(Ghellerら、2023。教室での研究です)。テレビの音声も、家族の会話も、ここに入ります。一体型のLDKは、いちばん邪魔になる音のすぐそばに、集中する場所を置いていることになります。
LDK一体型に憧れて建てたが、なぜか落ち着かない
開放感を求めて広いLDKを採用したのに、なぜか家族みんなそわそわしている。
→ オフィスを再現した実験があります。流したのは、人の話し声、歩く音、電話の音、キーボードの音が混ざった、よくあるオフィスの音。大きさは約59デシベルで、ふつうの会話くらいです。比べたのは、エアコンとパソコンのファンしか聞こえない静かな部屋(約36デシベル)でした。家に置き換えるなら、テレビの音、家族の話し声、食器の音です。
結果は少し意外でした。校正作業の成績そのものは、落ちませんでした。ところが気分は下がり、心拍と発汗はストレスの側へ振れていました(Sanderら、2021。住宅で確かめられたものではありません)。できてしまう。でも、心身は消耗している。「そわそわする」の正体は、こんなところにあります。
散らかりが目に入って疲れる
リビングからキッチン、ダイニング、すべてが視界に入る。片付けても片付けても、視覚的に常に「散らかっている」と感じる。
→ 米国の共働き夫婦30組(60名)を対象にした研究では、自宅を「散らかっている」と語る妻ほど、コルチゾール(ストレスホルモン)の一日のリズムが平坦になり、気分が沈む傾向がありました。夫では同じ関連が見られていません(Saxbe & Repetti、2010)。視覚的境界がないことの代償は、誰にでも等しくかかるわけではないようです。
もし1つでも当てはまったなら、原因は片付けの能力でも家具のセンスでもありません。2つの空間の関係性と、人間の作業モードの仕組みの問題です。次の章から、その関係性を整えていきます。
食事と、くつろぎを考える前に──どんな時間を大切にしたいですか
具体的な配置の話に入る前に、立ち止まって考えてみてください。間取り図やインテリア雑誌を開くより先に、いちばん大切なのは「あなたにとって何が大事か」です。
5W1Hで、暮らしを棚卸ししてみましょう。
- 大切なこと:ダイニングで過ごす時間・リビングで過ごす時間で、いちばん大切にしたいものは何ですか
- なぜ・何を:誰のために、何のためにそこで過ごすのですか(食事? 会話? くつろぎ? 学習? 在宅ワーク?)
- いつ・誰と:朝・昼・夜、それぞれ誰と、どんな気持ちで過ごしたいですか
- 意味:その観点から、あなたの家にとってダイニングとリビングは「それぞれ何のための場所」でしょうか
- 環境(どのように):今の家具配置や仕切り方は、その願いに応えていますか

たとえば、同じ間取りでも、求める関係性はまったく違います。
- 「家族の会話を最優先したい」家庭と、「夜は夫婦で静かに過ごしたい」人
- 「食事中はテレビを消したい」家庭と、「家族で番組を見ながら賑やかに食べたい」家庭
- 「リビング学習で見守りたい」家庭と、「子どもの集中環境を独立させたい」家庭
- 「来客が多く、お客様と家族空間を分けたい」家庭と、「友人とくつろぎながら食事を楽しみたい」家庭
正解は一つではありません。「価値観が先、配置・設計は後」。この順序が、後悔しない住まいづくりの土台になります。
そもそも、ダイニングとリビングの「役割」は何が違うのか

ダイニングは「食べる場所・集まる場所・活動の場所」
ダイニングは食べる場所であると同時に、家族が集まる場所、活動の場所です。食事、会話、子どもの学び、季節の行事、はたまた在宅ワーク。いくつもの営みが、ひとつのテーブルの上で重なります。作業療法では、人が暮らしの営みに加わることを「参加」と呼びます。ダイニングは、その参加がいちばん自然に起きる場所です。食事においては、共食の頻度が高い人ほど精神的健康度が高い、という傾向が報告されています(農林水産省 食育白書)。ただし、効いているのは回数そのものではありません。50の研究・49,137人をまとめた分析が示したのは、食卓で何が起きているか──食事にかける時間の長さ、前向きな雰囲気、テレビを消していること──のほうでした(Dallackerら、2019)。ダイニングは「何回集まるか」ではなく、どんな時間になっているかで効いてくる場所です。
リビングは「くつろぐ場所・回復する場所」
一方リビングは、活動の後にくつろぎ、注意を回復させる場所です。心理学の「注意回復理論」(Attention Restoration Theory)では、人の指向性注意(集中や努力で使う注意)は使うと疲弊し、回復が必要だとされています(Kaplan, 1995)。リビングは、その回復のために家の中に用意された場所です(もともとは自然の中での回復を説明する理論で、室内で確かめられたものではありません)。一日じゅう張りつめていた注意を、ここでほどく。気をゆるめてよい場所だと体が分かるかどうかが、この部屋の仕事です。
2つの空間の歴史的変遷
日本では戦後、狭い住まいでも寝る場所と食べる場所は分ける、という考え方が広まりました。その節目のひとつが1951年の公営住宅標準設計51C型で、1955年に発足した日本住宅公団の団地を通じて「ダイニングキッチン(DK)」が全国に広まります。そこに団らんの場としての「リビング」が加わり、LDKという形が標準になりました。
この変遷は単なる間取りの変化ではなく、「食事・くつろぎ・調理という3つの作業が、どの程度つながり、どの程度分かれるか」をめぐる価値観の積み重ねでした。LDKは「家族のつながりを最大化する」設計思想の結晶ですが、すべての家庭・すべての時期に最適とは限りません。
2つの空間をつなぐ「3つの関係軸」
ダイニングとリビングの関係性は、3つの軸で整理できます。

関係軸①:距離(近い・遠い)
物理的な距離は、配膳・片付け・食後の家族の集合に影響します。動作経済の考え方では、作業点の間の移動距離が長いほど歩数・時間・疲労が増えます(Gilbreth)。ダイニングからリビングへの動線が長すぎると、食後の片付けが滞り、家族の自然な移動も生まれにくくなります。
ただし、近ければ近いほどよい、というものでもありません。食卓とソファが近すぎると、食事の散らかりがそのままリビング側に届き、食後の切り替えがしにくくなります。
数字で見当をつけるなら、食卓の端からソファまで100cm前後が最初の目安です。椅子を引いて立つ分と、その後ろを人が通る分が、同じ場所で重なって、この数字になります。規格ではありません。数字の出どころは「ダイニングの動線|通り道から考える3つの目安」でたどりました。
ここを下回ると、誰かが立つたびに、通る人が足を止めることになります。逆に、朝に何人も行き交う場所なら、100cmでも足りません。同じ100cmでも、そこで何が起きるかで意味が変わります。
関係軸②:視線(つながり・区切り)
ダイニングからリビングが見えるか、リビングからダイニングが見えるかは、家族の参加感と落ち着きの両方に関わります。
視線がつながるオープンな配置では、家族の気配が常に感じられる安心感がある一方、目に入る物が増え、落ち着きにくくなることがあります(Rosterら、2016)。逆に視線を区切れば、目に入る物は減りますが、家族の気配も薄れます。どちらが正しいかではなく、何を手放すかの選択です。
ここで、設計の現場で見落とされやすいことをひとつ。間取り図を見るときも、家具を選ぶときも、私たちはたいてい立った高さで考えています。けれど家族がその部屋で過ごすのは、座った高さです。立つと見えるものと、座ると見えるものは違います。境界の高さを決めるときは、必ず食卓の椅子に座って確かめてください。
特に重要なのが「テレビの位置」です。先ほどの分析でも、食事中にテレビを消していることが、食事の質に関わる要素の一つに挙げられていました(Dallackerら、2019)。ダイニングからテレビが直接見える配置にするかどうかは、家族の会話の質に関わる設計判断です。
関係軸③:切り替え(モード切替の境界)
ここがダイニングとリビングの関係性に特有の軸です。
人間は一日の中で「食事モード」「くつろぎモード」「集中モード」を何度も切り替えています。作業療法の人・環境・作業モデル(Law et al., 1996)が示すのは、その切り替えやすさが、家具や間取りといった物理的な環境だけで決まるのではない、ということです。家族の気配や音といった社会的な環境も、同じくらい効いてきます。
ダイニングとリビングが完全に一体だと、モード切替の境界が曖昧になります。食事中にくつろぎモードが混ざり、くつろいでいる最中も食卓の乱雑さが視界に入る──そういう状態です。逆に完全に分離すると、家族の気配が薄れる代わりに、それぞれのモードに集中しやすくなります。
このモード切替を成立させる「境界の設計」が、ダイニングとリビングの関係性の核心です。
3つの関係軸と、暮らしへの影響
3軸が家族にどう影響するかを整理します。
| 関係軸 | 設計の特徴 | 食事への影響 | くつろぎへの影響 | 集中・学習への影響 |
|---|---|---|---|---|
| 距離:近い | 動線が短い | 配膳・片付けが楽 | 食事の余韻からくつろぎへ自然に移行 | 音が混ざりやすい |
| 距離:遠い | 動線が長い | 配膳・片付けに歩数が増える | 食卓と切り離されて落ち着く | 静かな集中環境を作りやすい |
| 視線:つながる | オープン | 家族の参加が増える | 視覚的雑多感が出やすい | 注意が分散しやすい |
| 視線:区切る | 仕切りあり | 食卓に集中しやすい | くつろぎが独立する | 宿題の場を作りやすい |
| 切り替え:曖昧 | 境界なし | 食事中もくつろぎが混ざる | 食卓の散らかりが見える | モード切替が困難 |
| 切り替え:明確 | 段差・腰壁・家具 | 食事に集中しやすい | くつろぎが独立する | 集中の場を作りやすい |

関係性の3パターンと、それぞれが生む暮らし
代表的な3パターンを、メリット・デメリットの一覧ではなく「どんな暮らしが生まれやすいか」で整理します。

完全分離型(部屋として分かれる)
LとDが扉や壁で物理的に分かれる形。生まれやすい暮らし:食事に集中でき、テレビの音や散らかりがリビングに流れません。子どもの食事のしつけ・宿題への集中も支えやすい。一方、家族の気配が薄れ、配膳の動線が長くなります。向いている:食事の質を最優先したい、子どもの集中環境を独立させたい家庭。
セミオープン型(部分的に分ける)
LとDが同じ空間にあるが、段差・腰壁・家具・ラグなどで視覚的・心理的な境界が設けられる形。生まれやすい暮らし:家族の気配は感じられるが、モード切替の手がかりが空間にある。「食事の時間」「くつろぎの時間」が自然に切り替わります。作業療法の目で見ると、参加と集中のバランスが取れた形です。向いている:気配を感じながらも、それぞれのモードを大切にしたい家庭。
完全一体型(オープンLDK)
仕切りなく一つの空間にまとまる形。生まれやすい暮らし:圧倒的な開放感と家族の参加感が生まれます。子育て中の見守りもしやすい。ただし、視覚的にすべてが見える分、目に入る物が増えやすく、片付けの負担を感じる人が出やすい(Rosterら2016/Saxbe & Repetti 2010)。生活音もすべて混ざります。向いている:開放感と家族のつながりを最優先したい家庭。そして私が訪問先で出会う住まいの多くが、この形です。もし負担を感じているとしても、それは選び方を間違えたからではありません。この形のまま境界を作る方法を、このあとの章で扱います。
どのパターンにも優劣はありません。先ほど棚卸しした「大切にしたい時間」と照らして選ぶことが、いちばんの近道です。
自分の家で確かめる3つの問い
3つの軸は、頭で考えるより、身体で確かめたほうが早くわかります。間取り図の上でも、いま住んでいる家でも試せます。

- ① 距離:食卓の椅子を引いて立ち、ソファまで歩いてみてください。途中で、誰かの椅子を避けましたか。
- ② 視線:食卓の椅子に座ったまま、ぐるりと見回してください。目に入るもので、いちばん気になるのは何ですか。
- ③ 切り替え:食後、あなたは何をきっかけに「くつろぎの時間」に入っていますか。
①で誰かの椅子を避けたなら、距離が足りていません。②で最初に浮かんだものが、あなたの家でいちばん効く一手です。③で思い当たるきっかけがないなら、いまは切り替えの手がかりが空間にない状態です。
ただし、どれも「少ないほど良い」という話ではありません。距離が近ければ配膳は楽ですし、いつも家族が見える部屋は、ひとりになりたい日には落ち着きません。確かめてほしいのは点数ではなく、いまの家がどちらに振れているかです。振れている方向が、あなたの大切にしたい時間と合っているなら、それでいいのです。
いまの家が一体型でも、境界は作れる
境界は、壁でなくてもかまいません。建て替えなくても、モードの切り替えは作れます。現場で効くと感じた順に、4つ挙げます。

① 食卓に座って、正面に見えるものを1つ減らす
いちばん安く、いちばん効きます。椅子に座ったとき、正面に何が見えていますか。テレビ、シンクの洗い物、山になった郵便物── そのうち1つだけを、視界から外します。テーブルの向きを90度変えるだけで済むこともあります。
落とし穴:全部を隠そうとすると続きません。1つだけにしてください。
② 光で切り替える
壁より早く効くのが光です。食事のあいだは食卓の上だけを明るくし、リビング側を落とす。食後は食卓の光を消して、リビング側をつける。明かりの位置が変わるだけで、体は「場面が変わった」と受け取ります。明るさと色の目安は「ダイニング照明は「健康と食卓の質」で選ぶ|住まい×作業療法の設計術」にまとめています。
③ 足の裏に境界を作る
リビング側にラグを1枚敷きます。足の裏の感触が変われば、そこはもう別の場所です。段差をつけなくても、境界は生まれます。
落とし穴:ダイニング側に敷くと、食べこぼしの掃除が増えて長続きしません。敷くなら、リビング側です。
④ 背の高いものを1つだけ置く
ソファの背、オープンシェルフ、大きめの観葉植物。座ると視線が切れて、立つと見える高さが、いちばん使いやすいと感じます。気配は残り、雑多なものは目に入らない。高さは、必ず食卓の椅子に座って決めてください。
落とし穴:家具で仕切ると、たいてい掃除機の道が犠牲になります。置く前に、掃除の道が残るかを確かめてください。
どこまでやれば十分か
4つ全部をやる必要はありません。「食事とくつろぎが切り替わった」と自分で感じられたら、そこで十分です。
逆に、①と②を試しても変わらないなら、原因は境界ではなく、物の量か通り道の側にあります。そのときは「ダイニングが片付かない理由は設計にある|建築×作業療法の収納術」や「ダイニングの動線|通り道から考える3つの目安」のほうが役に立ちます。
家族のライフサイクルで、関係性は変わる
「20年同じ間取りで暮らす」を前提にすると、子どもの成長や家族構成の変化に対応できません。年齢別の見直しポイントをまとめます。
- 乳幼児期(0〜5歳):見守りやすい一体型が安心。ただし子の昼寝中に静かなくつろぎが欲しい場合は、ラグや家具で軽く区切る工夫を。
- 学童期(6〜12歳):リビング学習をする家庭では、ダイニングからテレビが見えない配置を意識。集中環境の独立を考え始める時期。
- 思春期(13歳〜):プライバシーと家族時間のバランスが課題に。リビングが「家族と過ごせる中立地帯」として機能するよう、視覚的な落ち着きを優先。
- 子の独立後:夫婦中心の暮らしに切り替わる時期。食事とくつろぎの距離を近くして、ゆったりした関係性に再設計する家庭が多い。
- 親世代の来訪:年を重ねると、まぶしさへの弱さと、雑然とした視野から目当ての物を見つけにくくなることが重なってきます(訪問先でよく出会う困りごとです)。補助照明を1つ足す、通り道の物を減らす、座面が高めで肘のある椅子を1脚だけ用意しておく。この3つで、来訪はずいぶん楽になります。

家は20年以上同じ場所にあり続けますが、家具や仕切り方は変えられます。新築時に「全てを完璧に決める」のではなく、ライフサイクルで変えられる余白を残すこと自体が、長期的な健康への投資です。
まとめ:正解はない。「あなたの暮らしに合っているか」が唯一の問い
ダイニングとリビングの関係性は、距離・視線・切り替えの3軸で整理できます。どの形が優れているわけでもありません。

大切なのは、あなたがどんな食の時間を過ごしたいか、どんなくつろぎの時間を大切にしたいか、家族の集中をどう支えたいかという問いに、空間の関係性が応えているかどうかです。
「LDKがいいって聞いたから」「分けた方が落ち着くらしいから」── そんな外側の声に従う前に、自分たちの暮らしを言葉にしてみてください。
「なんとなく落ち着かない」「なんとなく家族がバラバラ」── その正体が空間関係にあるなら、それは性格の問題でも、あなたの段取りの問題でもありません。環境の問題です。そして、環境は変えられます。
まずは今夜の夕食を作りながら、一度だけ考えてみてください。「私はいま、どこを見ている? 誰の気配を感じている? 食事とくつろぎは、ちゃんと切り替わっている?」
その小さな問いが、健康な住まいへの最初の一歩になります。
※ この記事でお伝えするのは、公的な基準ではなく、建築設計と作業療法の視点から見た「暮らしの目安」です。正解を押し付けるものではなく、あなたが自分の住まいを見つめ直すための判断材料としてお使いください。
もっと深く知りたい人へ|次に読みたい記事マップ
この記事はダイニングとリビングの関係性を「広く」整理した記事です。それぞれのテーマをもっと深く知りたい方は、姉妹記事をご覧ください。
- キッチンとダイニングの関係性をもう一辺の視点で知りたい → 「キッチンとダイニングの関係性とは?2空間がつなぐ暮らしの意味」
- 「何を大切にするか」をじっくり考えたい → 「価値観に沿ったダイニングづくり|後悔しない基礎ガイド」
- 家具と家電を体系的に整理したい → 「ダイニングに必要な家具と家電|建築×OTで考える基礎ガイド」
- 照明のしきい値・色温度をもっと深掘りしたい → 「ダイニング照明は「健康と食卓の質」で選ぶ|住まい×作業療法の設計術」
- 朝の光と窓の配置を知りたい → 「ダイニングの窓、家族の健康を変える3つの目安|住まい×作業療法の視点」
- 収納の3原則を学びたい → 「ダイニングが片付かない理由は設計にある|建築×作業療法の収納術」
- 必要な広さと動作寸法を知りたい → 「ダイニングの広さは何畳?畳数より大切な動作寸法の目安」
- 家の中の通り道から考えたい → 「ダイニングの動線|通り道から考える3つの目安」
- 床の素材で迷っている → 「ダイニングの床材選び|優先順位を先に決める3つのものさし」
- 夏と冬の食卓の寒暑を整えたい → 「ダイニングの温度の考え方 〜夏と冬の食卓を守る4つの目安〜」
出典
- 農林水産省「食育の推進に役立つエビデンス:共食をするとどんないいことがあるの?」および平成29年度食育白書。共食頻度が高い人ほど精神的健康度が高く、栄養バランスが良好な傾向。 https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/evidence/togo/html/part4-1.html
- Dallacker, M., Hertwig, R., & Mata, J. (2019). Quality matters: A meta-analysis on components of healthy family meals. Health Psychology, 38(12), 1137–1149. 食事時間の長さ・前向きな雰囲気・テレビを消していることなど6つの成分が、家族の食事の質に関わる要素として報告(50研究・49,137人・61の効果量)。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31556657/
- Fiese, B. H., & Schwartz, M. (2008). Reclaiming the family table: Mealtimes and child health and wellbeing. Social Policy Report, 22(4), 1–20. Society for Research in Child Development. ※米国のデータ https://srcd.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/j.2379-3988.2008.tb00057.x
- Law, M., Cooper, B., Strong, S., Stewart, D., Rigby, P., & Letts, L. (1996). The Person-Environment-Occupation Model: A transactive approach to occupational performance. Canadian Journal of Occupational Therapy, 63(1), 9–23. 作業遂行は人・環境・作業の相互作用で決まる。
- Kaplan, S. (1995). The restorative benefits of nature: Toward an integrative framework. Journal of Environmental Psychology, 15(3), 169–182. 指向性注意は疲弊し、自然・ソフトな刺激で回復する(注意回復理論)。
- Gheller, F., Spicciarelli, G., Scimemi, P., & Arfé, B. (2023). The Effects of Noise on Children’s Cognitive Performance: A Systematic Review. Environment and Behavior, 55, 698–734.(小学生を対象とした26研究のシステマティックレビュー。教室での研究で、住宅で確かめられたものではない。人の話し声は言語性のワーキングメモリを有意に妨げる一方、非言語の音は注意力の低い子ではむしろ成績を上げる場合もあると報告されている) https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/00139165241245823
- Sander, E. J., Marques, C., Birt, J., Stead, M., & Baumann, O. (2021). Open-plan office noise is stressful: multimodal stress detection in a simulated work environment. Journal of Management & Organization, 27(6), 1021–1037.(オフィスを模した実験室での研究。話し声・足音・電話・キーボード音を混ぜたオープンオフィスの音[平均59.1 dB(A)]と、空調とPCファンのみの静かな条件[平均36.3 dB(A)]を比較。校正課題の成績は低下しなかったが、気分・表情・心拍・皮膚電気反応で測った心理的well-beingは低下した。住宅での検証ではない) https://doi.org/10.1017/jmo.2021.17
- Roster, C. A., Ferrari, J. R., & Jurkat, M. P. (2016). The dark side of home: Assessing possession ‘clutter’ on subjective well-being. Journal of Environmental Psychology, 46, 32–41.(1,300名以上を対象とした調査)※2026-08-04 要旨で確認。散らかりは「心理的な我が家」と主観的幸福感の両方に負の影響、という記述に一致 https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0272494416300159
- Saxbe, D. E., & Repetti, R. (2010). No place like home: Home tours correlate with daily patterns of mood and cortisol. Personality and Social Psychology Bulletin, 36(1), 71–81. 自宅を「散らかっている」と語る妻ほどコルチゾールの日内リズムが平坦化。夫では同じ関連なし。米国の共働き夫婦30組(60名)。 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19934011/
- 公営住宅標準設計51C型(1951年、吉武泰水・鈴木成文ら)と、1955年に発足した日本住宅公団の団地によるダイニングキッチン(DK)の普及。※DKの成立経路は、西山夘三の食寝分離論から51C型を経たとする説が長く定説とされてきたが、浜口ミホがドイツのヴォーン・キュッヘから導いたとする別の経路も指摘されており、単一の系統には整理されていない。本記事は年代と普及の事実のみを用いている。 https://www.mizu.gr.jp/kikanshi/no31/03.html
- Gilbreth, L. M. が1929年にニューヨークの女性博覧会で発表したモデルキッチン「Kitchen Practical」(ブルックリン・バラ・ガス社との共同)。作業点の間の移動距離を減らすという動作経済(motion economy)の考え方を、台所の設計に持ち込んだもの。※これを「ワークトライアングル」として定式化したのは1940年代のイリノイ大学 Small Homes Council(1944年設立)であり、Gilbreth 本人の用語ではない。本記事は動作経済の考え方のみを用いている。 https://slate.com/human-interest/2012/10/lillian-gilbreths-kitchen-practical-how-it-reinvented-the-modern-kitchen.html

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